自立への旅 – 本当の自分と出会う日

表現アートセラピー画像2ゴールデンウィークのこどもの日に、インナーチャイルドワークショップを開催するようになって、かれこれ10年以上になります。

「こどもの日」にちなんでインナーチャイルドをはじめたわけではないのですが、気がつくと例年、たくさんの内なる子供達と出会う機会となっています。

今年のテーマは、「家族とDNA」。
私達が引き継いでいる遺伝子に隠された秘密を辿る、無意識のジャーニーのような5日間でした。

「一人で大きくなったような顔をする」という台詞をよく耳にしますが、実際、大人になると私たちは、親に育てられたことを忘れて生きるようになります。もちろん、親をもたない人なんていませんし、親から受ける影響は計り知れませんが、いつしかその影響さえ忘れて独立して生きている錯覚を持ってし まいます。

表現アートセラピー画像3私は父を子供の頃に亡くしたので、一緒に過ごした思い出も少なく、何かを特別に教えてもらった記憶もありません。それでも成長してみると、ふとした時に、父と同じものを好み、苦手なものが似ていたり、同じような不安を抱えていることに気がつきました。
体質はもちろんのこと、気質までが遺伝しているのです。
ポジティブなものなら良いのですが、中には迷惑な素質も少なくありません。
そんな負の遺産を引き受けた私達は、無意識のうちに両親を求めながらも、遠ざけてしまうのです。

果たして、私達は何を親達から授けられ、受け継いで来たのでしょう?
それは、ポジティブなものばかりではなく、ネガティブなものもあります。

表現アートセラピー画像4” class=ネガティブなもので代表的なものが「怖れ」です。
心の傷は、怖れと悲しみを生み出す源として心に刻まれますが、その怖れのルーツを辿ると、父や母そして祖先から受け継いでしまった心の傷の歴史が 見えはじめます。
それは、生存するための苦肉の選択でもあったのです。

生物は、いろいろな遺伝子を働かせ、個体として生きていくとともに、子孫を作ってその性質を代々受け継いで行くという習性を持っています。
人間も、この原理を使って、親と同じ設計図をコピーして子へ伝えて行くように、あらゆる環境や状況に反応しながら、種の保存のために、適応する能 力を身につけて現在に至っているのです。障害に出会うと、生物は危機を認知し、その経験は仲間や子孫に反映されていきます。そうして、適応するための現在の生態系へと受け継がれて来ました。
表現アートセラピー画像5” class=つまり、私達はあらゆる障害を乗り越え、生き延びるために発達して来た生物なのです。その障害を乗り越える時に役立った感情の一つが「怖れ」なの です。

生き延びるために役立った「怖れ」ですが、その実体とは何なのでしょうか?
それは、どれくらいの信憑性があるのでしょう? 本気で「怖れ」に向き合った時、何が見えてくるのでしょうか…?
怖れの幻想を信じ、それをリレーのように渡していく連鎖の関係性は、鎖で繋がれた共依存の関係へと象られて行きます。解放されない悲しみや、怒り、怖れの感情は、家族の一人一人の深層に刻まれたまま、お互いが許されない対象として、罪や罰を背負った形で受け継がれているのです。

親であれ、家系であれ、そのしがらみを断ち切ったとき、はじめてその人は「独立した自分自身」として歩むことができるようになります。
しがらみを抱えたまま、自立することは出来ません。どんなに社会的に成功し、経済的に自立していたとしても、両親との間に何かわだかまりや未練を手放せずにいるのだとしたら、その人は、隠された傷に依存して生きているようなものなのです。

表現アートセラピー画像6” class=それでは、どうしたら、真の自立を達成することができるのでしょう?

人は、親や地域社会の枠から抜け出したい思いから、自立(個の確立)への道を探しはじめますが、見よう見まねで自分らしさを確立したものの、現れたのは、親への反発や承認欲求から創り上げた「見せかけの自分」だったりするのです。
不思議なもので、個になろうとしたとき、自分の中に自分を構成する要素(両親や先祖)が見えてきます。つまり、個になる(自分になる)ということ は、全体(先祖や生命体)を否定することは出来ないと知ることなのです。
自分(個)になるために、何かを否定する必要はないことを、その瞬間に気づくことが、真の自立のはじまりです。

しがらみを手放すということは、全体から離れ孤立することとは違うのです。
真の自立とは、あらゆるしがらみから自由になって、孤立することなく、他者と共存して生きることができることです。あらゆる生命体は、孤立して生きる事はできません。

表現アートセラピー画像7” class=その在り方に気づき、真摯に自分で在ることとは、他者と競争したり、対立したり、主張することではなく、お互いを尊重し信頼しあうことなのだと気づくことなのです。

そんなネガティブな連鎖「しがらみ」に気づいた人はラッキーなことに、それから自由になるというチャンスを手にしています。過去を塗り替えることは出来ませんが、「今」を変える力や可能性があることを知っているからです。インナーチャイルドワークショップでは、その怖れが創り出すネガティブなストーリーを見破り、在るがままの現実に向かって生きることを決めるパワーを、一人一人が手にしていました。

表現アートセラピー画像8” class=最終日は、5月5日のこどもの日でした。
誰もが、いま、この瞬間に自分を創造できる自由を手にしはじめて、過去のタイムラインを自分色に染めていきます。
出来上がった布の作品は、美しい人生の織物のようでした。
たなびく色とりどりのタペストリーは、まるで鯉のぼりのように、元気に風と遊んでいます。

晴れわたった青空に、人生の織物が飾られる時、
過去が、風にふかれ、流れていきました。