タスマニアン・ドリーム〜夢の巡礼

表現アートセラピー画像1オーストラリアの先住民族アボリジニの文化は、世界最古の生活文化だと言われています。アボリジニは、天地創造の時代から、現在に至るまで、スピリットの存在を信仰の中心として暮らしてきました。
神と称されるスピリットは、自然界にある物質や人間にいたるすべての存在を創造し、生きとし生けるものすべての祖先として敬われていたのです。そして彼らはその信仰の歴史の中で、「ドリームタイム」という天地創造の神話を語り継いできました。
ドリームは、いわゆる「夢」ではなく、「生活する、旅をする」を意味し、「ドリームタイム」という単語は、主に「時が始まる以前」または「万物創世の時」という意味があります。
ドリームタイムの物語にはいくつかの種類があり、「過去に起こった出来事 」「どのように宇宙が創造されたか 」「どのように人類が創造されたか」「宇宙の一部としての人類はどのような役割を与えられたか」に分けられるそうです。

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無数に存在するドリームタイムの物語で一貫していることは、祖先の精霊(スピリット)が人や他の物体に姿を変え、地球に降り立ち、陸や草木、動物などを今ある形に創造したということでした。それらの精霊は、人、動物を問わず、それぞれの個と種の関係性も確立し、大陸を巡りながら川や丘などを創造していきました。そして、そのような場所では今もその出来事にまつわる物語が語られているのです。
先住民の解釈による過去とは、それは現在の生命であり未来へと継承されるものでした。
仕事を終えた精霊は、動物、星、丘など別の物体へと再び姿を変えていくという物語は、まるで魂の輪廻のようです。

表現アートセラピー画像3時間の概念をこのような神秘的な解釈をもって司ってきたアボリジニ達は、もしかすると宇宙人からその叡智を授かったのかもしれない、…と思えるほど悟った存在のように思えます。

2015年度ドリームマップのワークショップは、そんなアボリジニの縁の地オーストラリア、スプリングブルックのKoonjewarre Retreat Centre/クォーンジワレ リトリート センターで行われました。アボリジニの聖地でもあるこの場所は夢を創造するのにピッタリの条件が揃った地です。豊かな自然に囲まれたセンターのワークルームでドリームマップのプログラムに取り組む参加者たちは、何の違和感もなく、クォーンジワレの世界に馴染んでいました。時折そんな皆のワークをのぞきにくるように、色とりどりの鳥たちや、ワラビーがやってきます。

表現アートセラピー画像4「クォーンジワレ」とは、オーストラリア原住民、アボリジニのユガンベ族の言葉で「高地にある出会いの場所」という意味がありますが、その名の通り、日本からはるばる訪れた参加者の人達にとって、異なる文化や自然やこの聖地に宿るスピリットとの出会いの場となりました。

今回の夢のワークのテーマは、過去を手放し、これまでの失敗を怖れずに、前進する勇気を持つことでした。
人間は、過去の失敗への怖れやトラウマから、チャレンジすることを躊躇し始めます。

失敗は、それを克服する勇気を持たなければ、単なる怖れの記憶でしかなくなってしまうのです。しかし、そこにいる限り、同じ過ちを繰り返すこととなり、夢に続く道も阻まれてしまうのです。それは、まるで交差点で右往左往している状態のようです。
オーストラリアには信号の無いロータリー状の交差点があり、これは通称ランナバウト(Runabout)と呼ばれています。

表現アートセラピー画像5ランナバウトとは、「その辺を気楽に走り回る」という語源から来ているそうなのですが、今回、初めてオーストラリアを運転した私にとって、ランナバウトは気楽どころか、緊張の代名詞のようなものでした。
一度ランナバウトの交差点に進入してしまったら、他の車に迷惑をかけないためにも、途中で立ち往生するわけには行きません。
結局、とっさに道を選択できない時には、そのロータリーをグルグルと回る羽目に陥ります。これは、まるで出口が解らず、同じ間違いを繰り返し、迷う自分の姿のようで、なんとも滑稽でした。
そこで、思いついたワークが、自分の望む未来(夢)に向かって、自分のとって正しい考えを選択し、進む勇気を創造することでした。

表現アートセラピー画像6過去の失敗は、ネガティブな経験で終わらせるのではなく、新しいチャンレジのための布石であり、その経験から学んだ事や、生まれた直感を使うことで、さらなる成長が臨めるのだと気づいた時、失敗は成長への踏み台となってくれます。
そのためには、もう一度、過去の失敗を洗いざらい思い出す記憶の旅(人によっては後悔の旅になることも…)を遡ることになりました。
その心の旅の中で、参加者の中には、癒やす必要がある自分の中の小さな子をみつけ、助け出す人も現れました。
「夢の創造に来たのに、えらい大変な、インナーチャイルドワークになってしまった」と、苦笑いする人も居たのは、私にとってはうれしい驚きでした。

そして、ワークのクライマックスは、人生のランナバウトをどのように通過するかという、まるで先住民の通過儀礼のような体験となったのです。

皆、それぞれの怖れを越えて、失敗を繰り返さないための決心と、「自分とは誰か?(犠牲者なのか、克服者なのか?)」を宣言する体験しました。
そして、もちろんのこと、すべての参加者達は、自分の創り上げたブロックを越え、夢に向かって進むことを選択することができたのです。

表現アートセラピー画像8例年、盛況のドリームマップですが、今年はオーストラリアの大自然や、ミュージシャンのPhilとChihoのサウンドヒーリングのエッセンスも加わり、これまでにない充実したワークショップとなりました。

感動と共にワークを終えると、直ちにオーストラリア秘境ツアーに出発することになりました。
ツアーの皮切りには、PhilとChihoのサウンド・ヒーリング・コンサート体験。
クリスタル・アルモニカの音の美しさと癒やしの音色に身も心も癒されました。ドリームタイムさながらのヒーリング効果に、それまでのワークの疲れもすっかり癒やされていました。

翌日から始まったツアーは、お天気に恵まれマウント・ウォーニングや、クリスタル・キャッスル、タンボリン・マウンテンなど、オーストラリアでも有数のエネルギースポットを巡り、何度もドリームマップで創造したビジョンのグラウンディングを行うことが出来ました。

表現アートセラピー画像12そして、旅の最終章に、アボリジニアートやアーティストをバックアップするBoomerang Art(ブーメラン・アート)が運営するギャラリーを訪れました。道に迷って、約束の時間を大幅に遅れて到着した私達を、主催者のワーナーさんご夫妻が心

良く迎えてくれました。
ギャラリーに一歩足を踏み入れると、そこにはアボリジニアートが並び、静けさの中に、大地から沸き上がるような熱気が感じられ、観るなり鳥肌が立ったほどです。

作品は、すべて本物のアボリジニアーティストによるもので、中にはあのエミリー・ウングワレーの姪にあたる方の作品は圧巻でした。何よりも、ギャラリーを運営されている関係者の方々が、真摯にアボリジニアーティストを支援するために活動しているお話に深く感銘を受けました。

表現アートセラピー画像9あらためて旅を振り返ると、思いがけないハプニングがありながらも、いつも事なきを得ることばかり。
道中あらゆる所にスピリットが宿り護ってくれていたような気がしています。
どこも初めて訪れたはずなのに、なぜかとても懐かしい匂いがします。そして、とても安心できるのです。
転生など普段は実感することなどないけれど、この時は誰もがここに居たことを思いだしたのです。
もしかすると、私達は祖先を敬っているつもりが、自分の過去世を癒やすために巡礼の旅をしているのかもしれません。
沖縄をはじめ、日本各地で開催するワークショップに、少しは慣れてはきたものの、海外巡業は初めての体験でした。

表現アートセラピー画像11解らないことばかりでしたが、協力してくれたPhilとChiho夫妻のおかげで、無事にスケジュールを全うすることができました。彼らとの出会いや、オーストラリアまで導かれた道のりを思うと、ここにも宇宙やスピリットのサポートが働いていたのだと思います。この場を借りて、お世話になった方々に心から感謝を送ります。
また、何よりも、参加者の人達がすべて心からワークや旅を楽しんでくれたことが、今回の旅の収穫でした。

そして、彼らはもとより、このツアーをサポートしていた私達にとって、忘れられない魂を浄化する巡礼〜ドリームタイムとなりました。


※画面の再生ボタンを押した後、右下に「四方の矢印マーク」が現れますので、それをクリックすると、スライドショーを全画面でご覧になれます。最後におまけ映像付き。お楽しみに。