時の魔法

東京の街を車で走っているとき、面白いものをみかけました。

「時は金なり」というメッセージつきの時計を屋根に乗っけたタクシー風(実は印刷会社の社用車)の車。

なぜ、印刷会社が時は金なりという言葉を表示しているのか、なんだか可笑しくていろんな想像をしてしまいました。
迅速なサービスの広告なのか、時間に厳しい社風なのか、時計を持たない人へのありがたいサービスなのか…。

この時間に関するイメージや価値観は人様々ではないかと思います。
時間という概念は人間を深く混乱の世界へと誘う魔術のような存在。

表現アートセラピー画像2ミヒャエル・エンデの「モモ」という有名な童話がありますが、この物語の中で、「時間貯蓄銀行」と称する灰色の男たちによって時間を盗まれた人々が心に余裕を無くし、暮らしていました。その中で不思議な力をもつモモという少女が人々の失った時間を取り戻すというファンタジーの世界。

忙しさの中で、文字通り心を失っていく人間への警鐘として書かれたように見える物語ですが、実はエンデ自身が、時間をお金に変換して利子を生む経済システムへの疑問を表したものだったそうです。

まさに、時は金なり。

しかし、その大切な存在を、私達は大切にするよりも、混乱の要素として親しんでいるような気がします。その時間に関するよりよい付きあい方をご紹介するお話を今月2010年2月18日発売のPHP<3月増刊号>に寄稿しています。

表現アートセラピー画像3時間とうまく付き合えない現代人の特徴を4つのタイプに分けて、どんな解決方法があるかをご紹介しました。

せっかちな人、のんびりやさん。みなそれぞれ時間の持っている罠にはまってしまいます。

罠といっても、時間がそれを創っているというよりも、私達人間の記憶の中にそれは存在しているのです。
時間という概念も、これについては魂の覚者やアインシュタインの視点で見ると幻想になってしまいます。過去や未来は存在せず、在るのは現在という永遠の時が在るだけ。

違う見方をすると、過去や未来はたった今、同時に存在するという相対性理論の考え方が当てはまります。もしかすると、モモはこの理論をうまく使って失った時間を取り戻す冒険に出たのかもしれません。
時間という幻想が人間にもたらすロマンスや弊害。
その幻想から人間を解放するためにはどうしたら良いのでしょうか?

それは、永遠という今に生きること。
今という時を十分に体験することです。

表現アートセラピー画像5なんだ、そんなことか…。と思われるかもしれませんが、人間はそんな簡単なことが、とても難しく感じてしまうのです。
つねに心は過去へのこだわりと、未来への不安でいっぱいになっています。たった今やっていることにまったく関係ない事ばかり頭を巡らせ、そして、行動が乱れ、いつしか時間を気にしながらも、時間を有意義に使うこともできず、追い立てられるようになってしまいます。

今という時間の波に乗れたら、不思議なくらい、時間に余裕が生まれ、自由を体験することでしょう。
「時間がない」という口癖を捨ててみましょう。

時間があるとしたら…、その時間に何をしたいか?本当にやりたいことは何なのか?自分自身に聞いてみてください。
もしかしたら、忙しくやっていることすべてが、本来にやりたいこととは違っているかもしれません。

「時は金なり」という諺の意味は本来、時間を大切に使えということなのでしょう。
自分の時間の使い方は誰が決めるのでしょう?
時間をお金に換算せず、時間に追われるのではなく、時という幻想的な小道具をうまく操る魔法使いになってみることをお奨めします。