ハワイ・ビッグアイランドコースに参加して

表現アートセラピー画像1

2004年3月、ハワイのビッグアイランドでPCETIのNature,Art,Spirit Confirmationのコースが開かれた。この地で表現アートセラピーのコースを行うことがナタリー・ロジャーズ(表現アートセラピーの創始者)にとって念願であったそうだ。カルフォルニアでおこなわれているコースとは趣が違う予感がして、私も何か新しい発見や体験を期待しての参加だった。

ビッグアイランドは、活火山や深い渓谷などの豊かな大自然で知られる場所。南国への観光旅行などとは縁の無い生活ばかり送っている身なので、研修とはいえ、わくわくしながら、たまった仕事を矢継ぎ早に片づけて、日本を出発した。
表現アートセラピー画像1現地へはコース初日の朝に到着。空港から車で1時間、会場となるハマクワ・エコロジーセンターというリトリートにたどり着いた。会場では、ナタリーをはじめ懐かしい先生方との再会をし、時差ボケでぐったりしながらも久しぶりのコースを満喫した。日本からは小野京子先生が引率する日本人グループが20人以上参加していたので、何か異国の地でのコースのような気がしない。
みな表現アートに深く興味を持つ人や、すでに日本で勉強している人たちばかりなのでワークはスムーズに流れる感じだ。日本人の他、アメリカを始め、イギリス、ロシア、韓国からの参加者もいて、まさに国際色あふれるコースという印象だった。普段日本では、自分自身は教える立場であったり、ファシリテーターとして働く機会のほうが多いので、今回は久しぶりに自分自身のための充電をすることが目的でもあった。久々のドローイングやムーブメントは、やや堅くなった感受性の筋肉を少しづつほぐすような準備運動からはじまった初日は「眠い眠い感じ」を表現した真綿と羽に包まれた私自身の堅い殻をつくった。

表現アートセラピー画像2

第2日目から局地的な雨が降り始め、エコロジーセンター周辺は70年ぶりという集中豪雨に見舞われた。
これが自然の洗礼と私たちは真摯に受けとめ、雨を絵やムーブメントで表現してみた。そして、もう雨はこりごりと思っていると、ついにセンター内の水道が断水してしまった。ライフラインのなかでも最も重要な水が絶たれることは、かなりの不自由が強いられる。復旧の目処も立たない中、雨は降り続ける。川は決壊し、車や家が流される被害が発生するまでに至った。

表現アートセラピー画像3

コース参加者の中にはこのあたりの村に住む人もいて、不安は隠せない。
やがて、トイレが使えないとか、シャワーに入りたいなどという私たちの呑気な願いなどどうでもよくなって、真剣に現地の人達の安全を願い祈る気持ちでいっぱいになった。

想像を超える自然の洗礼の中、コースのプログラムは不思議と整然とすすむ。
自分の中のシャドーを表すシンボルをマスクで表現してみるワークのなかで、イメージとして浮かんだのは龍だった。
表現アートセラピー画像4私はドラゴンヘッド(龍のお面)を黙々とつくり、ムーブメントで表現したとき、自分の中で、シャドーとしての苦しさを感じながらも、それ自体をわくわくしながら体験している部分に気づき新鮮だった。私の中で切り離されたシャドーは、このムーブメントによって、戻るべき場所を見つけ、統合を果たせたのかもしれない。そしてコースも終盤を迎え、ドラゴンのマスクをかぶって終了に向けてのワークをしているとき、
ふと気づいた・・・
龍は水神の象徴だった。
私は雨女という意識はなかったけれど、この時ばかりは、私もこの激しい雨に荷担したかのような自責の念を感じながら、「でも、まさかね・・」とつぶやいた。

コース最終日になり、ようやく太陽が顔をのぞかせた。

たった10日間の出来事だったけれど、やはり表現アートのコースが投げかけるテーマはいつも深い。
今回も多くの気づきや感動をもたらせてくれる機会となった。