インナーチャイルドとファンタジーの世界

幼い頃、傷ついた経験を境に、心の中に生まれた副人格をインナーチャイルドと呼ぶようになりました。
これは、子供時代の自分の記憶というよりも、その時受けた傷を抱えたまま、大人になった自分の心の中で
今も息吹いている存在なのです。インナーチャイルドは別名ロストチャイルドとも呼ばれ、自分の心の迷宮の中で迷子になっています。
彼らが棲むその迷宮にすら気づかない私たちは、子供の存在など気づくはずもありません。
長い時間(自分が大人になる間)ずっと忘れて去られていたので、チャイルド達は 傷を深め、落胆し、時には怒りを持って生き続けています。
その子供を癒やすセラピーが今日、静かなブームを呼んでいます。
子供を捜し出し、救いに行く心の旅は、まるでトールキンの「指輪物語」の世界に描かれたロールプレイング・ストーリーのようです。

チャイルドとの出会いは様々です。
イメージ療法を用いて、子供の意識と繋がる方法や、退行催眠というアプローチなどがあります。
トランス状態の中で意識を退行させていくとき、昔傷ついた体験を思い出すことがあります。そこには傷ついたままの子供が生き続けているのです。
または、不意に眠っている間に夢などで彼らに出会うこともあるのです。 一様に言えるのは、子供たちが大人になってしまった自分自身、子供である自分の存在に気づき、探し出してくれるのを心待ちにしているということ。 傷を負わせたのはもちろん私たち自身ではありませんが、その子供達を忘れ去り、置き去りにしてきたのは、紛れもなく自分に違いありません。 そして、その子供達を生んだのも、自分なのです。
自分が生み、自分が忘れ去った子供を探しに行く旅はまるでファンタジーそのものです。 そして、子供と出会い、その傷を癒やすことで彼らは再生していきます。
それが新しい子供の誕生、それをワンダーチャイルドと呼びます。

アメリカの心理療法家ジョン・ブラッドショーは、自身の著書である「インナーチャイルド」の中でこのように述べています。
「神話の意味についての偉大な教師ジョセフ・キャンベルは自分の人生でしたいことをすることを『自分の至福の発見』と言いました。これも勇気がいります。新しいことをする試みと、それがうまくいかない時にあたらしいものへ移動すること、それをなすには自発性、弾力性、そして※ワンダーチャイルドの好奇心が必要です」

ここでブラッドショーが伝えるワンダーチャイルドとは、内的リソースの象徴とも言える存在で、活気に満ちた好奇心に溢れる子供の心をさします。
この心を取り戻したとき、私たちは現実の世界がまるでファンタジーなのでは?と思えるような時間を過ごせるのかもしれません。
心が寂しさを感じるとき、お気に入りのお伽話をインナーチャイルドにむけて読んであげてはいかがでしょう?