変化~パラダイムシフトへの扉 – クリスマスワークショップ2016

「サターンリターン」という言葉を聞いたことがありますか?
占星学によると、土星(Saturn)がホロスコープを一周し、29年ぶりに出生時の位置にもどってくる周期現象のことを指します。土星回帰と云われるこの人生の転換期は、土星の回転周期(29歳、58歳、87歳)に誰の元にも訪れるそうです。言うなれば、西洋版厄年のような現象。


土星は「困難」や「試練」のシンボルでもあることから、人々に嫌煙されがちですが、「義務」や「カルマ」など、その人が成長するために取り組むテーマを携えていること忘れてはいけない点です。
土星に影響を受けると、誰もが困難を感じ、厭世感を強めてしまいます。そして、その原因は自分の能力であったり、運命のせいだと決めつけてしまうのです。29歳を境に(29歳の前後2年ぐらい影響があるそうです)に人生の転換期を体験する人が多いのは、この時期にさしかかっているから、と云われています。実際に、「若気の至り」が通るのは、20代まで。30代を目前にして、あらゆる変化やチャレンジが訪れます。

さらに、土星が支配するテーマには、「責任」や「忍耐」があるため、社会と関わる事柄に直面したり、自立を促されたりすることが多いのも頷けます。また、日頃、忍耐し続けた人や、コツコツと努力を重ねた人は、この時期にビックチャンスに恵まれたり、苦労から解放されることもあるそうです。(反対に、ツケを貯めた人にとっては、精算するための期間となります。)
いずれにしても、自分の蒔いた種の実りを刈り取ることから逃げられる人はいません。結果を刈り取る作業そのものが、課題であり、成長へのチャンスなのですから、取り組む以外に道は無さそうです。

日本人ならば、馴染みのある「厄年」なども、迷信だと片付けていた私は、占いの周期説も真剣には捉えることもありませんでした。在る時、占星術でこの数年の出来事をリーディングしてくれた人が、ため息混じり私にこう云ったのです。「エリさん、今、サターンリターンに入ってるから、辛抱の時ですね」
「何それ? サターンリターン? 」
その意味を知らなかった私は、20代の終わりに、やり残したことや、その時起こった出来事が再来することもあると聞き、思い当たる節に気づきました。

20代の終盤。離婚を機に、私は長年勤めていた会社を辞め、ニューヨークで絵を描くという夢だけをカバンに詰め込み日本を後にしました。振り返ると、土星の洗礼のおかげなのか、その時、満足する作品も描けずに帰ってしまったことや、南米への旅を予定しながら、勢いが見つからず諦めてしまったことを思い出したのです。

気づくと今、第2のサターンリターンの時期にさしかかっている私は、無意識に南米の旅に出て、帰って来ると29年ぶりに絵筆を握っていたのです。まさか、自分が否定していた惑星の周期の流れに乗っていたことなど知らずに。

描くための十分なモチベーションを求めるように、参加した講座の宿題がジョージア・オキーフだと知った時、私の中で何かのスイッチが入りました。オキーフは、昔から好きな画家でした。ニューヨークに行ったのも、彼女に憧れていたからこそ…。何の迷いもなく、原寸大の模写に取りかかりました。多分、数年前だったら、こんな自分は思い描けなかったでしょう。描くことほど、自分が現れる作業はありません。隠れていた闇が光に照らし出されるように、色彩が溢れ、そこに形が現れました。
その時、長年自分が抱えていた絵に対する思い込みが見つかったのです。それは、まるで自分に掛けた手錠の鍵を自分が握っているような感触でした。たった一つの歪んだ観念が、何十年もの間自分を縛り付けていたことに気がついた時、あまりにもあっけなく、気が抜けて笑う事しか出来ませんでした。今思えば、29年ぶりに再会したオキーフが、その答えを耳打ちしてくれたような気がします。

以来、私はそれまで保留にしていたことを一気にやり始めることにしました。やり残したこと、やり忘れていたこと、いつかやろうと思っていたこと。不要なものを整理しては捨て、持っていたくない感情や思考を手放して行きました。それらは、物理的なものから、意識的なものまで数え切れない保留が変化を待ち望んでいたのです。

変化は、期せずしてやってきます。むしろ、変化は日頃から起こっていて、それに気づかずにいるものかもしれません。そして、気づくのは、大きな変化のみ。それも、困難を伴うものが印象的に心に刻まれて行くのです。 そうして、誰もが思います。「変化したくない…」と。
変化は、怖れを伴いますから。その一方で、変化しない麻痺した感覚への怖れもあります。どちらにしても、怖いのだとしたら、どちらに進めばいいのでしょう?

未知に対する怖れを超えるために、好奇心のエッセンスを使うのか。
既知の安心と麻痺にくつろぎながら忍耐するのか…。

今年最後のクリスマスの、パラダイム(世界観)を変化させるワークショップでは、保留にしていた古い世界を壊すことから始めました。
当たり前に信じていることを覆す番狂わせが変化を起こします。凝り固まった古い観念システムを取り替えることは容易でないかもしれません。

しかし、そのシステムは、そうとう年季が入っているし、役立ちそうもありません。 自分の価値を疑う典型的なネガティブ思考は、私達を蝕み、本来の自然な在り方を打ち消してしまいます。そして、信じたくないその歪んだ真実を信じることで創り出す世界を生きることになるのです。 慣れ親しんだシステムを変化させて行くには、相当な覚悟と勇気が必要です。

心に溜まった煤払い(すすはらい)をすると、真新しいビジョンが見え始めました。自分の世界を暗く閉ざしているのは、誰でもなく自分だと気づけたとき、<自由>というギフトが現れます。誰もが、贈り物を胸に新しい年を迎える準備を始めていました。

思いがけない変化のあった2016年。
私の人生はさておき、世界情勢も劇的に変化して行こうとしています。
それまで、当たり前だったことが、ある日突然変わってしまう出来事が起こります。 しかし、その兆しは静かにやって来ていることに私たちは気づきません。

あなたにとって、この1年の変化を認めることはできたでしょうか?
変化とは、成長の現れです。
「未知」が私たちに教えてくれることは限りなくありますが、思い込み(既知)は、何も見せてはくれません。

すべての変化は、良い方向に向かっていると云われています。
ならば、何を怖れることがあるでしょう?

止まることは、命にとって、「死」を意味します。つまり、死を体験することのない命は、変化しつづけるのです。
流れる水は濁り、腐ることはありません。
そうやって、今ここに生きることだけが、私達人間の使命なのだと思えます。

サターン・リターンの時期は、困難期だと捉えずに、チャンスを掴む時なのだと思う方が楽にやり過ごせるそうです。変化への抵抗を手放し、流れを信頼した時、土星は大きなご褒美をもたらしてくれます。

土星回帰を迎えた人や、変化を余儀なくされている人へ。
迷うこと無く、信じたい未来に向かって踏み出してください。
そして、自分の人生に責任を取り、幸せを創造してください。
そんなエールを、自分や同じ流れを体験している人達に祈りと共に送ります。

新しい年が、あなたにとって素敵な変化に満ちたものでありますように…。

愛を込めて。

エリ

Repropainting / Acrylic 76.2x 101.9cm