極上の夏休み2~疲れた脳の休め方

昔々、携帯電話やスマホなど無かった時代。

電話は、大きな受話器を使って(時には肩で耳に押しつけて)話をするのが当たり前でした。もちろん、話している間は、電話機から離れることはできませんから、まるで繋がれた犬のように長話の間、じっとしていなければいけません。そんな時、長話に飽きてくると、手元のメモ帳に意味の無い形を描いたりしたものです。唯一、動かせるのが手ぐらいなので、無意識が描かせたのでしょう。さて、みなさんも、そんな経験はありませんか?

人間は、ストレスを感じると、無意識に回避するために反応する習性をもっていますが、これはその一つです。落書きなど、線を描くだけでも人間はリラックスするという研究があります。

「脳の右側で描け」の著者であるベティ・エドワーズは、人が絵を描く時、右脳を使っているという研究結果に基づき、独自にドローイング理論を創りました。その理論によれば、輪郭線を集中して描く時、人間は自動的に右脳モードに切り替わるそうです。
そもそも、線そのものには何も意味がありませんが、何かを象った瞬間、線に意味がもたらされます。

例えば、「○」を描く過程で線に意味はありませんが(←右脳モード)、線が丸くなった時点で、「円」と認識されます。(←左脳モード)さらにその円の中に、目を描き、口を描けば、人の顔に見えます。
つまり、何かを意図して描く時、右脳よりも左脳に偏りがちになるということです。

もしも、リラックスするために描くとしたら、何かを描くのではなく、ただ線だけに集中することが重要なポイントになります。自意識(エゴ)は、意味のあるものが大好きなので、意味の無い線を描くのは苦痛かも知れませんが…。

しかし、電話中の落書きや、ある一定の時間無心になって絵を描いたりすることで、確実に右脳が活性化しはじめます。
そして、描き終わると脳波が瞑想をしたのと同じようにリラックスした状態になっているのです。

エゴの習性を理解すれば、じっと瞑想することが苦手な人は、落書きをしたり、絵心のある人はたまにスケッチすることで自分の中心と繋がる体験をすることができるというわけです。

さて、手軽にドローイングで右脳モードを体験できる方法をご紹介しましょう。

用意するものは、鉛筆またはペンと紙だけ。

呼吸を整えたら、目の前の紙の中央に一筆書きで、ゆっくり時計回りに○(円)を描いて行きます。この時、1㎜を1秒ぐらいかけてゆっくり描くこと。同時に呼吸にも意識をむけましょう。
※写真は筆ですが、鉛筆やボールペンなどお持ちの筆記用具で十分です。

ゆっくり吐いて、そしてまたゆっくりと吸います。これを円を描き終えるまで続けます。慣れたら、ゆっくり吐いてから吸い込むまでの20秒ぐらいの間に円を描き終えるようにします。

円を閉じるとき、線と線がぴったりと着くようにすると、より集中が高まります。はじめは上手く描けないとしてもまったく気にしないでください。それよりも、上手く描こうとしないほうが楽に描けるようになることに気づくでしょう。

書き終えた円をみつめながら、ゆっくり呼吸を整えて終了です。時間があれば、繰り返し何度も円を描くと気分が変化していきます。線に集中している間、あなたの脳は確実に右脳モードに切り替わっているはずです。(もしも、何かを考えながらだとNGです)

頑張って集中しようとしたり、無心になって瞑想をしようとすると、かえって上手く行かないことがありますが、集中しようとするのをやめて、このようなアプローチ(ドローイングプロセス)などを用いてみると楽に集中することができるようになります。

気持ちがイライラしたときや、短い時間で集中する時に役立ちますので、ぜひ試してみてください。

問題にぶつかったら、まずは考えるのをやめて、深呼吸してみたり、メモ帳に落書きをしてみませんか?

時間に追われている忙しい人でも、1日たった5分だけ左脳にお休みを与えてあげてください。

1日では変化を感じない場合、このプロセスを1ヶ月続けてみてください。確かに思考が静かになっている自分に気づけるはずです。疲れから解放されたあと、あなたの脳は新しいアイデアを創作するエネルギーに満ちてくることでしょう。

出来不出来に捕らわれず、線を真剣に見つめている間、間違いなくあなたは今、目の前の「円」と共にいます。

それが、禅でいう「今、ここ」の極意(マインドフルネス)なのです。

次回は、マインドフルネスのもたらす最強の効能についてご紹介します。

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