体験するアート〜西国アート体験の旅 Vol.1

久しぶりの関西は念願のアートと出会う旅になりました。
まずは日本でもここ関西にしかない大規模なフンデルトヴァッサーの建築を見に行きました。

フンデルトヴァッサーは、オーストリアのアーティストであり、建築家としても有名な存在です。そのファンタジックな建築は彼の描く世界をそのまま具現化したようなアート作品といえます。

かつて、画集でしか見ることがなかった彼の世界をぜひ立体として目にしたくて、大阪市のはずれにある舞洲のゴミ処理場へ。

なぜにゴミ処理場なのか?というと、大阪市舞洲にあるゴミ処理場の施設の建築のデザインをフンデルトバッサーが手がけたからなのです。
一見、アミューズメントパークと見紛うような奇抜なデザインですが、この日本でこの規模の建築物があること自体大変珍しいこと。

表現アートセラピー画像2以外に親日家だった彼の作品が大阪にの集中(もう一つはキッズプラザ大阪)しているのは何故でしょう?

市内からゴミ処理施設のある埋め立て地へ向かう桟橋の上から、シンボリックに輝く金色の煙突を見たときは思わず歓声をあげてしまいました。

それにしても、彼のスケッチそのままを再現したこんな建物を建ててしまった大阪市にはただ脱帽です。

フンデルトヴァッサーの母国オーストリアにあるシュピッテラウ焼却場のデザインを準えて創られたこの施設は、未来の環境への祈りを込めた記念碑のようです。

別の視点から眺めると、フンデルトバッサー特有のデザインでもある、建物の窓から生い茂る植物のディスプレーが、まるで荒廃したゴーストタウンを彷彿させるので、もしかしたら、環境汚染の進む未来への警鐘として存在しているのかもしれない、という連想を抱きました。
カラフルでファンタジックな彼のスケッチに親しんでいた私にとっては、少し予想外な出会いでした。
大阪の市民からはそうとう税金の無駄遣いだと批判を浴びたそうですが、私にはこんな夢のある出費ならもっとしてほしいと思えるのです。

関西地方では、アートへの関心が深いのでしょうか、各地で大規模なアートイベントも盛んに行われているようです。

表現アートセラピー画像7瀬戸内の離島・直島で展開されている現代美術にかかわる様々なイベントやシンポジウムを展開するプロジェクトなども今回の旅のめあての一つ。

大阪でのワークショップを終えた翌日、さっそく瀬戸内・直島へと脚を伸ばしました。直島にはベネッセ地中海美術館など数々の現代アートの作品や建築が点在しています。その中の李禹煥美術館へまず訪れるため、大阪から岡山を通りフェリーで直島へ渡りました。

大阪のワークを終え、休む間もなく早起きして出発したのですが、フェリーの乗り継ぎがうまく行かず、直島に着いたのはお昼近く。昼食を食べる間もなく、美術館を目指します。

表現アートセラピー画像8すると、目的の李禹煥の建物へ行くには、車は通行できず、シャトルバスを待つよりはと、延々と歩きで坂道を上っていきました。
これも想定外なアスレチックな経験に戸惑いながら…。運良く道を間違えたおかげで島の景色を堪能したのは良いのですが、李禹煥美術館に辿り着く頃には空腹も手伝って、少々バテ気味のアート体験となりました。

李禹煥は昔から好きなアーティストの一人です。

和紙のような生成のキャンバスに盛り上がる岩絵の具の質感。

その瞑想するような潔い筆痕の存在感は、私がまだ10代の頃、ほんの少しだけ日本画を経験したときの名残からか、とても心地よく親しみさえ感じられるのです。

直島の李禹煥美術館の建築は安藤忠雄によるもので、建物とアート作品のコラボレーションのような空間そのものが表現作品なのだと思います。

李禹煥や安藤忠雄の表現と出会うとき、それらは何かの自己主張というよりは空間や有機体としての人間とのインタラクティブな舞台に自分が立っているような気持になります。

それは、アートは鑑賞するよりも体験するためのものというメッセージが込められているようです。

願わくば、十分にゆとりのある状態で訪れたい空間でした。

表現アートセラピー画像9結局、帰りのフェリーの時間が迫っていたこともあり、ゆっくりと他の美術館を巡ることもできず、後ろ髪を引かれるように直島を後にしました。

時間に追われていたのは、その後に予定していた香川県牟礼にあるイサム・ノグチの庭園美術館を訪れるためでした。

実は、直島にフェリーで着いた時点で、次の予定地四国への便の時間を計算すると、予定よりも大幅に遅れることが判明。目的の庭園美術館への予約時間に間に合わないという、危機的な状況(苦笑)へと一転!

優雅なアートとの出会いという希望は吹っ飛び、直島のアスレティック美術鑑賞を終えてもまだ、次なる目的地へ向かいながら、時間との鬼ごっこは続くのでした…。

表現アートセラピー画像10

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